用途

  • 工作機械関連
  • 半導体関連
  • 医療関連

特長

  • 転送面等の細部にわたる設計の最適化により、世界最高峰の軸受性能を引き出している。


■GMN社の特徴

GMN Paul Müller Industrie GmbH & Co. KGは、1908年ドイツのニュルンベルクに設立され、DIN規格に基づいたP4S(GMN社ではP4と表記)等級などの精密軸受を約100年に渡り製造/販売してきました。自社製のGMNスピンドルをはじめ、工作機械、半導体、医療分野等、幅広い業界に軸受を販売しています。

精密アンギュラ軸受の生産レンジは618/619/60/62シリーズ(GMN社ではアンギュラ軸受を6と表記)となり、内径φ120mm まで対応しています。自社製の精密軸受を自社製のGMNスピンドルに使用しており、スピンドルメーカならではのノウハウを精密軸受に有しています。

特急対応としてエクスプレスオーダ(短納期体制)と呼ばれるGMN社独自のシステムも導入しています。
※エクスプレスオーダの可否は部材の状況等によります。詳細はお問い合せください。

GMN社
GMN社 本社の写真

■精密アンギュラ軸受(標準シリーズ)

GMN社が製造/販売している主なラインナップは以下となります。

Sシリーズの図
Sシリーズ:標準的な精密アンギュラ軸受

内外輪/転動体に軸受鋼を、保持器にフェノール樹脂を用いた標準的な精密アンギュラ軸受です。

転動体の材質にセラミックを用いたHYSシリーズも対応可能です。

SMシリーズの図
SMシリーズ:転動体のサイズを変えずに高速性を実現した精密アンギュラ軸受

使用している材質、転動体の大きさはS シリーズと同じですが、内輪の曲率を変更したことでSシリーズよりも高速性を実現した軸受です。

転動体の材質にセラミックを用いたHYSMシリーズも対応可能です。

KHシリーズの図
KHシリーズ:転動体のサイズを小さくし、更なる高速性を実現したグリース封入型シール付き精密アンギュラ軸受

使用している材質はS/SMシリーズと同じ軸受鋼ですが、小さな転動体を採用することで更なる高速性を実現したグリース封入型シール付き精密アンギュラ軸受です。

転動体の材質にセラミックを用いたHYKHシリーズも対応可能です。




■精密アンギュラ軸受(特殊仕様の一例)

外輪給油孔からオイルまたはグリースを直接送り込むことで、潤滑性と高速性の向上を目的とした特殊仕様軸受です。その他の特殊仕様軸受につきましてはカタログをご参照ください。


●オイル供給タイプ(+A/+AB/+L/+LB)

+Aタイプ
<+Aタイプ>
+ABタイプ
<+ABタイプ>
+Lタイプ
<+Lタイプ>
+LBタイプ
<+LBタイプ>

●グリース供給タイプ(+AG)

+AGタイプ
<+AGタイプ>



■ハイブリッド軸受(HYS/HYSM/HYKH)

内外輪に軸受鋼、転動体にセラミックを採用したハイブリッド軸受は、すでに多くのアプリケーションで採用されています。多数の評価試験、フィールド実績よりハイブリッド軸受の優位性が実証されており、セラミック(窒化珪素:Si3N4)は軸受鋼(100Cr6)と比較すると多くの利点があります。


①長寿命

フィールド実績に基づきますと、ハイブリッド軸受は標準軸受(内外輪/転動体が軸受鋼)よりも約2 倍以上の寿命が期待できます。主な理由は次の通りです。

セラとスチールの表

・レース面との親和性が低いため、接触面の凹凸による粘着性磨耗が少なくなります。

・低摩耗のため、レース面へのダメージが少なくなります。

・低粘着、低摩擦であることから、潤滑環境が悪くても焼付きにくくなります。

・低発熱、境界潤滑条件の向上により長寿命化が期待できます。



②高速性
dmnとS/Rのグラフ

・低摩擦、低発熱のため、鋼球と比較すると約30%許容回転数が向上します。

・セラミックボールは軽量であることから遠心力の影響を受けにくく、また縦弾性係数が高いことから接触楕円も小さくなります。

・高速時に大きなウェイトを占めるすべり摩擦はスピンロール比で表現され、0.25 を超えると軸受寿命に影響を及ぼします。(GMN社の場合)

 ※右図dmn値はx106となります。



③高剛性
dmnとラジアル剛性のグラフ

・セラミックボールの方が縦弾性係数が大きいことから、低速時のラジアル剛性は鋼球と比べ約15%高くなります。

・高速時には、遠心力により内外輪に負荷される荷重分布が変化するためラジアル剛性が減少しますが、遠心力の影響が小さいセラミック球はその減少率が低くなります。

・高剛性は精度を向上させ、危険速度への影響も少なくします。

 ※右図dmn値はx106となります。



GMN軸受画像
④加工精度の向上

高剛性、低発熱、低振動により対象ワークの加工精度を向上させます。



⑤定格荷重の優位性

DIN/ISO 規格にはハイブリッド軸受の定格荷重の定義が規定されていませんが、標準軸受と比較して長寿命であることは実証されています。GMN 社は標準軸受とハイブリッド軸受を同じ定格荷重としています。




■保持器の種類(一例)

GMN社は繊維強化フェノール樹脂を標準品として採用しておりますが、PEEK材を用いた特殊な保持器等もご用意しています。各保持器の特徴は以下となります。

TA保持器
TA cage
項目
TXM保持器
TXM cage
繊維強化フェノール樹脂 材質 PEEK
120℃ 耐熱温度 250℃
外輪案内 案内方式 外輪/転動体案内
機械加工 加工 モールド
  • 低摩擦
  • 高速回転向け
特徴
  • 低摩擦/高速回転向け
  • 保持器振動の低減
  • 負荷/薬品/温度への耐性up
  • グリース潤滑が行われやすい構造



■グリース潤滑時におけるTXM保持器の優位性

TA vs TXM

GMN社の経験上、PEEK材を用いた保持器(TXM)の方が繊維強化フェノール樹脂保持器(TA)よりも運転温度、軸受の実用寿命に関して有利という結果になりました。

・TXM保持器の方が運転温度が10%低くなりました。

・TXM保持器の方が軸受実用寿命が30%長くなりました。


■グリース慣らし運転

GMN社推奨のグリース慣らし運転を行うことで、以下の効果が期待できます。

・スピード性能の最適化

・軸受運転温度を減少

・適正な潤滑油膜の形成

・グリース寿命を長寿命化

・運転時の信頼性向上

グリース慣らし運転は以下のステップで行います。
ステップ1. 断続運転

ステップ2. 連続運転

GMN社慣らし運転
●ステップ1. 断続運転

最高回転数に補正係数を乗じた回転数で短サイクルの運転を繰返します。 20 秒以内の運転で補正後の回転数まで立上げ、1 分間の連続運転、2分間の停止を繰返します。 1 サイクルにおける回転数、運転・停止時間は以下となります。

・サイクル数:5 回  1分間の連続運転:最高回転数×0.33  停止時間:2 分

・サイクル数:5 回  1分間の連続運転:最高回転数×0.66  停止時間:2 分

・サイクル数:5 回  1分間の連続運転:最高回転数×1.00  停止時間:2 分


●ステップ2. 連続運転

最高回転数でスピンドルを連続運転します。外部からスピンドルに荷重を与えないようにします。

・サイクル数:2 回  30 分間の連続運転:最高回転数  停止時間:5 分


●注意点
・運転時に急激な温度上昇やノイズが見られた場合、即座に運転を停止してください。ハウジング温度は60℃を超えないようご注意ください。
・ 温度、ノイズは適切な計測器を用い、全サイクルで計測を行ってください。
・ グリース量、粘度はベアリング慣らし運転に影響を与えます。
・ 推奨グリース量につきましてはカタログをご確認ください。



■許容回転数

カタログに記載のある許容回転数は、下記条件下において単列・バネ予圧状態で運転した場合のガイドラインです。

・良好な放熱状態にある
・外部荷重が小さい
・内輪回転
・周辺部品の精度が適切
・組付け精度、アライメントが良好

軸受の配列、仕様に応じて表1に基づく回転数減少係数を乗じる必要があり、個々のアプリケーションにおける実際の許容回転数は異なります。許容回転数の目安は以下の計算式から算出されます。


許容回転数(目安) = カタログ値 x f1 x f2 x f3


表1 回転数減少係数 一覧表
fn 配列 予圧による回転数減少係数
定圧
予圧
定位置
軽予圧
定位置
中予圧
定位置
重予圧
f1 ばね予圧 1.0 - - -
DB all - 0.8 0.7 0.5
DDBB all - 0.75 0.6 0.4
DB - 0.7 0.6 0.4
TDB - 0.6 0.5 0.3
DDBB - 0.65 0.5 0.3
fn 内輪 or 外輪回転 回転条件による回転数減少係数
f2 内輪回転 1.0
外輪回転 0.6
fn 転動体の材質 転動体の材質による回転数減少係数
f3 軸受鋼 1.0
セラミック 1.25

■固有振動数

固有振動数は、軸受全体のみならず、内輪、外輪、転動体、保持器等、各パーツの幾何学的形状にも影響を受けます。軸受の音質、音域は、各パーツから発生する固有振動数が組み合わされたものと考えられます。

●音に関する要素

・転走面と転動体の仕上げ精度、表面粗さ
・保持器の形状と材質
・潤滑方式と清浄度

GMN 社の精密アンギュラ軸受は、品質管理の観点より全数に対し音響・振動テストを行っています。高い仕上げ精度でベアリングを製造・管理していることから、スムーズで優れた回転性能、長寿命が実現されています。


●各パーツの固有振動数の計算

以下の計算式で算出されます。

各パーツの振動数 計算式 備考
内輪転走面に対する転動体の通過振動数 Z 2 × fi × 1 + Dw dm cos α 0 [1/s]

f i = 主軸の周波数 [1/s]

Dw = 転動体直径 [mm]

dm = ピッチ円径 [mm]

Z  = 転動体数 [個]

α0 = 接触角 [° ]

外輪転走面に対する転動体の通過振動数 Z 2 × fi × 1 - Dw dm cos α 0 [1/s]
保持器の固有振動数 fi 2 × 1 - Dw dm cos α 0 [1/s]
転動体の自転振動数 fi 2 × dm Dw - Dw dm cos 2 α 0 [1/s]

■軸受選定/寿命計算

弊社では、GMN社より提供された独自の計算ソフトを用い、トレーニングを受けた経験豊富な専門のエンジニアが最適な軸受選定/寿命計算を行っております。軸受選定にお困りの際は、お気軽にお声がけください。ご提供いただける範囲でかまいませんが、計算を行うにあたり以下の情報が必要となります。

計算モデル

計算結果グラフ

ボール面圧

・アプリケーション

・スピンドルの図面

・スピンドルの軸方向/径方向の寸法

・軸受組付け位置寸法/配列

・予圧方式(定圧/定位置予圧)

・潤滑方式(グリース/オイル)

・最高回転数/定常回転数

・推定される軸受の内輪温度/外輪温度

・スピンドルに負荷されるアキシアル/ラジアル荷重

・上記荷重が負荷される軸方向の位置

・スピンドルの向き(縦/横)

・ご使用環境(粉塵が多い等)

・ご要求される軸受アキシアル/ラジアル剛性

・ご要求される軸受寿命

※1
計算結果は計算ソフトによるものであり、実際の機械上での性能を保証するものではありません。実際の運用におかれましてはお客様のほうで実機評価を行っていただき、その結果をご確認のうえ、ご使用可否のご判断をお願いいたします。

※2
アプリケーションによっては上記以外の内容もお尋ねする場合がございます。予めご了承ください。

この商品に
関するお問い合わせ

用途や機能などの諸条件に適した商品をご提案することも可能です。お気軽にお問い合わせください。
お近くの営業所でもうけたまわっております。

福田交易株式会社 本社営業部

03-5565-6811