潤滑方法と特長

軸受を潤滑する目的は4つに大別される。

  1. レース面、転動体そして保持器の間で生じる滑り摩擦を最小にする。
  2. 精密に研磨され、仕上げられた表面を錆から守る。
  3. 発生した熱を拡散する。
  4. 油膜を形成させて、軸受の疲労寿命を延長させる。

各潤滑方法の特長比較

潤滑方法長所短所
グリース潤滑
  • 低コスト
  • 容易に温度上昇を低くすることができる
  • メンテナンスフリー
  • 軸受に封入したグリースが劣化すると軸受の損傷につながる
  • ごみや切削液の侵入に弱い
オイルミスト潤滑
  • 新しい油が常に軸受に送られるため、油の劣化寿命の心配がない
  • ごみや切削液が侵入しにくい
  • ミストに雰囲気汚染
  • 油の粘度、温度などにより給油量がばらつくため、少油量給油に限界がある(但し、インジェクションタイプは除く)
  • 油が供給されているかどうかの確認が必要
ジェット潤滑
  • 油量が多いため、ごみや切削液が侵入しにくく、焼き付きにくい
  • 油の冷却により、軸受部の温度をある程度コントロールできる
  • 摩擦損失が大きい
  • 油が漏れるため立形スピンドルに使用しにくい
  • コストが高くなる
オイルエア潤滑
  • 定量管理が可能なため、最適油量にコントロールできる
  • 発熱が小さいうえに、空気の冷却効果があり温度上昇が低い
  • 新しい油が常に軸受に送られるため、油の劣化寿命の心配がない
  • ごみや切削液が侵入しにくい
  • ミストによる雰囲気汚染が少ない
  • コストが若干高い
  • 配管が複雑
  • 分配器のエア抜き等のメンテナンスが必要

グリース潤滑

グリースの構成成分

FAGの主なグリース

名称 増ちょう剤 基油の粘度
mm2/S@40℃
ちょう度 使用温度範囲 使用目安
dmn
用途
アルカノールL71 リチウムソープ 74 3 -30 ~ +140 60万 振動運動中低速用
L74V リチウムソープ 23 2 -40 ~ +100 160万 高速スピンドル
L78 リチウムソープ 74 2 -30 ~ +130 60万 中低速用
L79 合成基油 390 2 -30 ~ +270 停止~低速 耐熱用
L135V リチウムソープ 85 2 -40 ~ +150 10万 テーブル用ボールねじサポート用
L75 ポリウレア 22 3 -50 ~ +120 200万 超高速

FAGシール付きアンギュラベアリング

  • 非接触シールにより、ベアリングの摩擦係数はシールなしとほとんど変わらない。
  • アルカノールL75グリース封入(封入量は、空間容積の約35%)
  • グリース寿命を長寿命化

グリース潤滑でのスピンドル温度上昇

軸経
φmm
ベアリング
配列
ベアリングタイプ max
スピード
min-1
dmn値
n・dm 10^6
室温+t℃ グリース 予圧方法
前側後側
70QBC2-B7014C2-B7011C7,0000.6317L74V定位置予圧
90TBT+□3-B7018E1-NN30165,0000.57525~28L74V定位置予圧
90TBT+□3-B7018E1-NN30165,0000.575 12~16L74V定位置予圧
130TBT+□3-B71926E1-N1022K5,0000.775 23(B719)
12(N10)
L74V定位置予圧
60QBC2-HS7012C2-HS71911E16,0001.24 8L74Vバネ予圧
70QBC2-HS7014C2-HS7011C7,0000.63 8L74V定位置予圧
70QBC2-HS7014C2-HS7011C10,0000.9 17L74V定位置予圧
100QBC2-HS7020E2-HS7018E8,0001.0 13L74V定位置予圧
100QBC2-HS7020E2-HS7018E8,5001.062 17L74V定位置予圧
130DB1-HS71926C1-HS71924C9,0001.395 22~23L74Vバネ予圧
110QBC2-HS71922E2-HS71920E8,0001.04 20L74V定位置予圧
20QBC2-HCB7004C2-HCB7004C51,0001.581 26L214バネ予圧
100QBC2-HC7020E2-HC7018E11,0001.375 f:14℃
r:19℃
L74V定位置予圧
70DB1-HC7014E1-HC7011E16,3001.467 18L74Vバネ予圧
70QBC2-XCS71914E2-XCS71911E20,0001.70 17L75バネ予圧
70DB2-HCS7014E2-HCS7012E15,0001.35 15L75バネ予圧

グリース潤滑 スピンドル例

FAGスピンドル軸受昇温テスト

1.B71912E・TPA・P4・UL標準スピンドル軸受
2.HS71912E・T・P4・UL高速スピンドル軸受
3.HC71912E・T・P4・ULセラミックボール軸受
グリース潤滑:ISOFLEX SUPER LDS18. 1CC/軸受

オイルミスト潤滑 スピンドル運転例


オイルエアスピンドル使用例

FAG B71913C TPA P4 ULFAG B71914C TPA P4 UL
油の粘度VG32 [mm2/s]
ノズル径Φ1 [mm]
ノズル数1(ベアリング1枚当たり)
P.C.D前側80.25mm、後側73.5mm
潤滑油量0.03 [cc/shot](ベアリング1枚当たり)
サイクルタイム6分
圧力1~1.5 [bar]

オイル潤滑時の主な注意事項

  • 配管を急激に曲げたり、複雑な配管は必要最小限度にする。
  • 配管材料は清潔で、内面の滑らかなものを使用する。できれば、透明のものを使用した方が良い。
  • 供給エアはエアドライヤで除湿されたエアを推奨。
  • スピンドル運転前、油が軸受に供給されているか確認するため、ドレンから油が排出されているか確認する。
  • エア抜きを確実に行う。

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