ベアリングは、周辺部品、構造、潤滑を含んだ適切な選定と取扱いをすることで、疲労寿命に到達するまで長時間に渡り使用することができます。しかし、寿命に到達する前に早期損傷を引き起こしてしまう場合が数多くあります。この早期損傷の原因として次の要因が考えられます。
早期損傷の原因
- 取扱いミス、組付ミス
- 潤滑不良
- 異物の侵入
- 周辺部品の不具合(加工精度)
- 振動の問題
- 不十分な検討(予圧、荷重、潤滑)
- 装置の運転環境
なお、これらの要因は複合して発生することが多く、それらベアリングの症状は千差万別のため、損傷原因の判断は、装置に組込まれた各々のベアリングの症状を検証し、ベアリングの配列、荷重条件、潤滑条件、シール構造、装置の仕様、運転状況、使用環境などから総合的に判断する必要があります。正確な運転状況の把握、また予知保全として定期的な振動測定、温度測定などのデータ採取が、問題の早期解決に重要になります。
ここでは、主に工作機械主軸用精密アンギュラベアリング損傷の具体例を、実例に基づき紹介いたします。
【Case1】
内輪転送面にボールピッチ間で発生したフレーキング


原因
- 外部からの振動によるフォールスブリネリングからの発展
- 衝撃荷重による圧痕からの発展
外輪転送面の症状

ボールの症状

【Case2】
内輪転送面に発生した局部的なフレーキング①

原因
- 局部的な集中荷重が加わったことにより発生。その要因としては、ミスアライメント、ハウジングの精度不良、過大ラジアル荷重などが考えられる。
ボール(セラミック製)の症状

外輪転送面の症状

内輪内径面の症状

【Case3】
内輪転送面に発生した局部的なフレーキング②

原因
- 局部的な集中荷重が加わったことにより発生。その要因としては、ミスアライメント、ハウジングの精度不良、過大ラジアル荷重などが考えられる。
ボールの症状

外輪転送面の症状

【Case4】
内輪転送面の全周に渡る微小ピッチング

原因
- 潤滑不良からの面荒れ。(予圧過多または過小)
ボールの症状

外輪転送面の症状

内輪内径面の症状

【Case5】
ホーニングラインが残っている内輪転送面

原因
- 運転時間は、約2,000時間。正常な運転状況下では、ホーニングラインが残っている。(継続使用可能な症状)
外輪転送面の症状

【Case6】
保持器破損




原因
- 潤滑不良によるボールと保持器との相対運動の乱れから摩耗が進行し破損。
ボールの症状

内輪転送面の症状

外輪転送面の症状

【Case7】
外輪転送面に発生した局部的なフレーキング


原因
- ラジアル剛性不足(予圧不足)
内輪転送面の症状

ボールの症状
