PLANKOスピンドル端面異物検知システム

異物検知システムの技術動向

技術部 技術課 長塩 規一(Norikazu Nagashio)

はじめに - 開発の背景

グローバルな価格競争に直面している工作機械メーカーにとって、高機能・高精度なマシン開発による生産性向上は大きな課題となっている。

機械加工時に生じる金属粉は、クーラントやオイルエアーと混じり合い、エアークリーニングの際に粘性を有して、工具ホルダーやスピンドル端面に付着する。異物の付着は、機械加工時の性能低下を招くだけではなく、ときにはマシン停止に至ることもあり、特に長尺の工具を用いた場合、仕上げ精度に悪影響をおよぼす。

高精度な機械加工と高生産性を両立させるため、OTT-JAKOB社はスピンドル端面異物検知システム『 PLANKO 』の開発を行った。


写真は加工エリア内にあるスピンドルの典型的な事例である。
スピンドル端面上のエアークリーニング噴出孔上に金属粉が異物として付着している。

スピンドル端面(前側)
スピンドル端面(前側)

異物検知システムの技術動向

既存の異物検知システムの技術は、『油圧または空圧機構』、『クランプ力の実測、距離』、『力センサーを内蔵した応答装置』、『外付けセンサー機構』の4つのカテゴリーに分類することができる。

異物検知システムの分類

異物検知システムの分類

油圧や空圧による検知機構の場合、既設の圧縮空気を利用して比較的簡単にシステム構築できるというメリットがある反面、圧力損失の影響により40μm 以下の異物を検出できないというデメリットがある。

クランプ力測定の場合、ドローバー内部ばね力の連続的な監視、クランプユニットからの直接的な検知、あるいはクランプ動作時のモーター電流を検出する方法が挙げられる。しかし、ばねの減衰の影響を受けやすく、さらに装置のコストアップが課題となる。

力センサーや距離センサーを用いた応答装置を組込む場合、センサーとツール端面に生じる衝撃力による擦れや摩耗、あるいは主軸のシステム剛性の低下や軸伸びの懸念などが生じる。

スピンドルの周囲に外付けセンサーを接続する場合、現行のツールホルダー規格形状に合致しない、またはコンタミネーションによる悪影響が問題となる。

セラミック共振体と導波管による画期的なシステム

『 PLANKO 』 基本コンセプト

a) 工作機械主軸に組込み可能であること。生産性を向上させ、コストメリットを有すること。
b) システムに組込む電気部品は、一般市場から入手可能であり、汎用性があること。
c) スピンドル周囲からの外乱、あるいは汚染の影響を受けにくいこと。
d) 主軸を適正に回転させるため、電気部品はシャフト上には取付けないこと。

開発への取組み

導波管
導波管の図

中空導波管、およびセラミック共振体とレーダー技術の応用を開発の基本コンセプトとした。

導波管(右図)は入力部と出力部が金属で覆われた場合に適用可能である。
高周波が内部で反射・増幅され、信号として伝送される本構造は、共振体(レゾネータ)と呼ばれる。

基本モードのカットオフ周波数が以下のグラフに青線で示され、中空径がφ9 mm の場合には20 GHz の高周波を伝達することが可能である。

中空径とカットオフ周波数の特性
中空径とカットオフ周波数の特性

中空部を絶縁体で埋めた場合、カットオフ周波数はさらに小さくなる。ここでは、自動車分野用の電装部品として一般的に適用される24 GHz (ISMバンド)の周波数を前提条件とする。トライアルの結果、3mm中空径をアルミナ(Al2O3)で埋めることで、24 GHz高周波を伝送させることが可能となった。

導波管内を伝わる高周波は、共振体の長さにも依存する。長さの変化にともなって、共振周波数も同様に変化していく。この原理を主軸アプリケーションに適用することで、ツールホルダーと主軸間の距離の測定が可能になる。
以下の図で、異なる共振体長さにおける共振周波数のシュミレーション結果を示す。 グラフでは主軸端面に10 μmの異物が介在する条件のもと、エアーギャップが10μm毎に広がっていく場合の周波数の変動が示されている。実機検証の結果、シュミレーション結果と実測値が完全に一致することが確認されている。

共振体を応用したツールホルダーと端面の距離測定

ツール端面距離

周波数特性

周波数

システムの構築

以下は実際に開発した異物検知システムの装置概要を示している。

【端面異物検知システムPLANKO評価用HSK-A63スピンドル】
異物検知システムの装置概要1
異物検知システムの装置概要2

主軸の着座端面には6本のセラミックピンが共振体として埋め込まれ、高周波が伝わることでATC動作時の端面間との距離の測定を可能にする。なお、原則としてセラミックピンの数と位置は許容されるスペースに対して任意である。1個のピンが基準位置認識のため、わずかに位相をずらして配置されることで、各共振体の位置と実測値を認識することが可能になる。

ロータとステータの間にはアンテナセンサーを採用し、わずかなギャップを介して高周波信号を伝送する。共振体とアンテナセンサーの間はケーブル接続が施されている。HSK-A63スピンドル前側の外周部にはレーダー式センサーを内蔵している。他の電子基板やNC側からの信号も不要で、システムは主軸回転中に自律的に作動する。 市場要求により、主軸前面の限られたスペースを利用し、電子部品も小型化した上で、自由度の高いシステムの構築を果たしている。

PLANKO

評価結果

異物検知システムを組込んだ評価用スピンドルを実際に3,000回転で運転させた際のテスト結果を以下に示す。
異物として、10μm/20μm/40μmの金属粉を使用し、実測評価をおこなった。その後も継続して、運転条件を変更して評価をおこなっている。

実測評価結果
実測評価結果

フィールドでの工作機械用スピンドルの運転では、他の多様な因子を考慮する必要がある。特に自動車の生産ラインのような過酷な運転条件を事前に見込まなければならない。

おわりに

OTT-JAKOB社ならびに欧州の複数スピンドルメーカー間の共同開発プロジェクトとして、大手マシンメーカーとも連携の上、機上でのフィールド評価が日進月歩で進行中である。

日本のマシンメーカーとのタイアップの可能性も広げていく必要がある。主軸の端面異物検知システムとしては、画期的なソリューションを提唱するものである。本システムの開発動向、アプリケーション実例に基づく評価結果の動向にさらに注目したい。

参考文献
1) Stefan Bonerz , Wolfgang Bechtler , Josef Greif
Sensor system for monitoring the planar tool flange contact on the basis of ceramic
resonators and circular wave guide structures (2012)
OTT-JAKOB Spanntechnik GmbH
2) Stefan Bonerz
Actual developments on condition monitoring for integrated motor spindle tool clamping
OTT-JAKOB Spanntechnik GmbH / FKD Innovation days (2013)

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