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ハンドスピナー大戦への挑戦 ―

令和3年2月13日、長岡花火やモノづくりの街などとして知られる新潟県長岡市で、「第3回全日本ハンドスピナー大戦(主催:NPO法人長岡産業活性化協会NAZE)」が開催されました。
当社は前年大会から出場し、今回は初めて精密加工機械=スピンドルの製造・修理拠点である「テクニカルセンター」の技術力を結集させ大会に臨みました。チーム名は、拠点所在地の神奈川県海老名市にちなんで「エビなーにゃ」。日頃の経験や知識を活かして、独自のハンドスピナーを設計開発し、大会に参戦、世界記録を超える*1 30分28秒という回転時間で優勝を果たしました。

チーム結成からモノづくりの裏側、回転力を与えるための試行錯誤など、大会出場にまつわるエピソードをテクニカルセンターの3人に聞いてみましたのでご紹介します!

*1 今回の大会ではギネス公式認定を受けていませんが、単純にハンドスピナーの回転保持時間の比較で記録を超えることができました。

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チーム「エビなーにゃ」(写真左から佐藤、大谷、花木、藤村、柴田)

― まずは3人の自己紹介をお願いします。

柴田 テクニカルセンターのセンター長で、マネジメント全般をやっています柴田です。
花木 修理スピンドルの組み立てをやっております、花木です。
佐藤 同じく、修理スピンドルの組み立てをやっております、佐藤と申します。

 

『少なくとも23分を超える、或いは近づける―』

― プロジェクト始動のきっかけを教えてください。

柴田 昨年10月の社内会議で、前回に引き続き参戦するということが決まり、前回はテクニカルセンターは関与していなかったのですが、「今回はテクニカルセンターを中心に」という会社の指示で取り組むことになりました。
昨年優勝したチームのタイムが23分12秒でしたので、少なくとも23分を超える、或いは近づけるようなものができればいいなと、目標を設定し取り組み始めました。

― チーム内の役割分担を教えてください。

柴田 1チーム5名で2回、回せることになっているので、佐藤さんと藤村さんが回し手担当、私はリーダー、花木さんは不具合などで手直しができるエンジニアで、大谷さんは応援団という形ですね。(笑)

 

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『最高、回って5分とか7分程度でした...。』

― 開発は順調に進められましたか?

柴田 当初始めたときは、何も作っていない状態なので、「テクニカルセンターにあるもので一体どのくらい回るんだろう?」というところから始めました。
テクニカルセンターで組んでいるのは、精密加工された部品の組み合わせであるスピンドルですので、それを使えば「それなりに回るだろう!」という思惑で、シャフトにベアリングを組んで、ケースとなるものと一体で何回か回してみたのですが、最高回って5分とか7分程度でした...。

― 意外と回らないものなんですね?

柴田 結局、重さとか、ベアリングのサイズだとか、いろんなものが関係していたんだと思うんですが、そこで「本当に23分いくのかな...」という不安な気持ちが、試作機を作るまではちょっとありましたね。

― どんなところにこだわって改良を加えたのでしょうか?

花木 特にないです。(笑) 柴田さんがこだわって作っていました。(笑)
柴田 私が設計して組み立て、その中で色々手直しだとかバランス取り、測定を主にやってくれたのが花木さんで、佐藤さんは組み上がったものをいかに初速を速く回せるか、練習を重ねてくれました。


― ハンドスピナーって、どんな理屈があるのでしょうか?

柴田 結局、円盤なんですね。本当に忠実に、物理的に、円盤の運動方程式で、どこにどうポイントを置けばトルクが一番大きくなるのか、というところに重点をおいて図面を描いています。その上で、例えば重さとなったときに、限られた寸法の中で最も重くなるもの、つまり比重が大きい金属を使うという考え方と、あとはただの円盤とドーナツ状のものが回るのとでは、慣性モーメントのかかり方が違ってきます。ただの一枚の円盤よりは、真ん中が抜けていて、ドーナツ状のものの方が慣性モーメントが大きくなるので、真ん中にある材料はなるべく軽く、外側のものは重くという形と、なるべく半径を大きくとれるような、そういったものの考え方で、形や材料を設計しました。

― ...。難しそうですが、理論通りに回りましたか?

柴田 当初はもう少し大きいベアリングを使う予定だったのですが、やっぱり回転している時間がどうしても20分に届かないというところがあって、ベアリングをちょっと小さくしたら、いっきに20分を超えてくるようになりました。
大会前、あるチームは30分回っているという噂を聞きましたので、何とか30分に届かせようという思いから、一度できたものをもう一度追加工をして、さらに重さを増やしたりしましたね。あとは、いかに初速をつけるかで、30分に届くようになりました。

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『これやったらいきそうかなぁ』『ああやっぱり違ったなぁ』の繰り返し

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― 日常の業務と比べて難しかったでしょうか?

花木 どうですかね~。もうモノが違うので、当然スピンドルの方が難しいですけど。(笑) 
柴田 まあ面白いでしょう?なんか趣味の延長みたいなところがあって、「これやったらいきそうかなぁ」とか、それでやってみて、「ああやっぱり違ったなぁ」みたいな、その繰り返しですね。開発当初はやっぱりある程度理屈に基づいて作りましたけど、結局できてから色々トライ&エラーはどうしてもつきもので、その辺で花木さんに色々、手伝ってもらって、途中で追加工やら、振れ出しやら、色々彼の腕で仕上がったと思ってます。

― ハンドスピナーのバランス取り作業は簡単なのでしょうか?

花木 簡単かどうかはわからないですけど、普通のスピンドルとは違うんでちょっと大変でしたね。

― 今回の経験で仕事に活かせることはありましたか?

柴田 逆...かな? 仕事が活きているところがありますね。

― 作る過程でハプニングとかはあったんですか?

柴田 回してすっ飛ばしちゃった人いなかったっけ?(笑)
花木 いましたけど・・・。(笑)
柴田 それを直したのも花木さんです。

『みんなでタイム計って、回し手に選ばれて、一緒に優勝できてとても嬉しいです』

― 佐藤さんは今回、どんな気持ちで回したんですか?

佐藤 ハンドスピナーを作ったり調整したりはすべて柴田さんと花木さんに任せっきりだったので、モノができて、みんなでタイムを計って、藤村さんと私が回し手に選ばれて、一緒に優勝できたことがとても嬉しいですね。

― 回すときの秘訣はあるのでしょうか?

佐藤 本番まで初速の回転数を測りながらやっていて、当初は速くても800(min-1)を超えるくらいだったんですけど、練習を重ねて、900回転とか出せるようになりました。

― 何かコツが見つかったんですね?

佐藤 そうですね。手のひらだけではなく、ひじくらいから巻き込むように回すと、回す距離、力を加える距離が長くなって速くなりました。

柴田 回し方は色々みんなゴム手袋して回してみたりやってみたけど、佐藤さんと藤村さんが始めたこの方法がすごく回転数が上がるということが分かって、それを練習を重ねて極めて言った感じですね。

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[インタビュー動画]テクニカルセンターのエンジニアに聞くオリジナルハンドスピナー『HSP2021』

独自に開発したハンドスピナー「HSP2021」で前回大会記録を超え30分28秒で優勝!
大会当日の一部始終(30分28秒)の様子はこちら(YouTube動画)

テクニカルセンター スナップ1
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テクニカルセンター スナップ3
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福田交易テクニカルセンター

日々の経験と常識にとらわれない発想 ―

2020年10月―、普段はスピンドルの製造や修理を行うエンジニアたちが、経験と理論をもとに、初めてのハンドスピナー開発をはじめ、比重の大きな部品を追加工したり、バランス取りを行ったり、また回し手も初速がより大きくなるように日々試行錯誤したりして、タイムが伸びていきました。
通常、スピンドルなどの回転体には潤滑が不可欠で、これがなくなるとベアリングは焼付きます。開発当初は粘性が低いグリースでテストしますがタイムが伸びず、"常識"を外れたアイデア=無潤滑で試したときに大幅にタイムが伸びました。
日頃、工作機械のスピンドルを扱う彼らにとって、潤滑はベアリングの命そのもの。それを常識でとらわれない発想と役割分担化されたチームワークでタイムを伸ばすことができたことは、とても大きな収穫だったようです。

 

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福田交易株式会社 テクニカルセンター

〒243-0417神奈川県海老名市本郷1672

神奈川県海老名市に新工場を建設して、2019年7月より操業開始。工作機械用の精密スピンドル分解・組立て、試運転作業スペースやマシンショップエリアを大幅に拡張。ベアリングやスピンドル部品の精度検査室(室温管理)、スピンドル特性の精密測定室(室温管理)や騒音測定室を完備しています。

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