はじめに

スレード社の独自製法ヤーンで編組される3300G(膨張黒鉛グランドパッキン)は、膨張黒鉛(80%)とカーボンファイバー(20%)で構成される膨張黒鉛グランドパッキン(編組パッキン)です。

多くの回転・摺動用グランドパッキンには潤滑剤や含浸剤などが含まれています。高温高圧用バルブで使われる膨張黒鉛を金型で成型した「リング成形パッキン」には、機械的強度を補うためアダプターパッキンと組合わせた利用を求められます。 その点からも"潤滑剤・含浸剤"不使用のスレード膨張黒鉛グランドパッキンは"オンリーワン製品"です。

膨張黒鉛は摺動抵抗が低く、高い熱伝導率と耐熱性から最適なシール材です。しかし、機械的強度が乏しいことからガスケットシートなどの固定用シールへの製品化が進み、一方で運動用シールの製品化には難しい一面がありました。
この機械的強度が乏しい膨張黒鉛から作られるヤーンと編組パッキンはスレード社が特許を取得した独自技術でもあります。 この独自技術はグランドパッキンに大きな利点をもたらしました。

①高い熱伝導率

一般的な回転用グランドパッキンはシール水による冷却と適量の漏れが必要です。 焼きつかないグランドパッキン「3300G」は周速24.4m/secまで、シール水なしでもお使いいただけます。 3300G(ランタンリングとシール水なし)だけを使用したパッキン構成では、昇温する軸の熱を放熱させる"ヒートシンク"の役割りをグランドパッキンが担います。

膨張黒鉛と鋼製定規を氷に当て、手から伝わる体温で氷を部分的にとかします。 この高い熱伝導率が放熱効果となりシール水なしでもお使いいただける3300Gの強みとなります。

膨張黒鉛の熱伝導性 - 低温編 グランドパッキン

一般的なグランドパッキンは、繊維以外に潤滑剤や含浸剤など複数の異なる材料から構成されています。
個々の材料の熱伝導率の違いなどもあり、グランドパッキンの焼きつきを防ぐためシール水の利用が求められます。

②潤滑剤・含浸剤の不使用

3300C・3300G膨張黒鉛グランドパッキンは実用温度摂氏-240~1,000℃でご使用できます。(540℃以上のご使用条件では、必ず事前にお問合せください。) 一般的なグランドパッキンは、潤滑剤・含浸剤に適した温度範囲での利用が製品を最大限に活かせる利用方法です。

また、パッキンの含有剤(充填、添加、ディスパージョン)は摺動摩擦や酸化などにより劣化が進み、稼働中の回転軸からの発熱で熱硬化が起こり、パッキン交換時にパッキン引き抜き工具が刺さらないことも起こります。 3300C膨張黒鉛パッキンには含有剤不使用のため、焼きつきや熱硬化が起こりません。

バルブなどの高温環境の設備において、PTFE系潤滑剤が含まれるグランドパッキンではPTFE系潤滑剤の昇華によりスタフィンボックス内部でフッ化水素酸が生成され軸/スリーブを腐食させます。 *3300Cは膨張黒鉛(90%)、カーボンファイバー(10%)で構成されています。

膨張黒鉛の熱伝導性ー高温編 グランドパッキン

また、この素晴らしい製法は、要求の厳しい米国API規格に認証されています。 スレード社「3300i」はAPI622 2ND EDITION認証製品です。 3300iは膨張黒鉛+インコネルワイヤ(ニット編み)のヤーンを編組したグランドパッキンで、もちろん潤滑剤や含浸剤は不使用です。 他にも同規格に認証されたグランドパッキンは存在しますが、3300iは一線を画す低排出量を実証した、環境に優しいグランドパッキンです。


担当者コメント

メカニカルコンポーネンツ部シール技術課 石井 泰史(Yasufumi Ishii)

回転機器の軸受保護用シールや軸封シールなど、欧米からのユニークな製品をご提案します。 お客様の様々な環境下の設備機械にかかわるシールについて、最善のご提案をご用意 いたします。是非、当社までお気軽にご相談ください。

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