Fenner Drives(フェナー・ドライブズ)社パワーツイスト

「機械技術」2023年4月号別冊
『主要 企画要素の選定・活用ガイド2023』に記事が掲載されました。

メカニカルコンポーネンツ部機工課 課長 斉藤 博幸(Hiroyuki Saitoh)

Vベルトの役割と特徴

伝動ベルトは各種あるが、代表的なタイプとして下図のものが挙げられられる。

Vベルト標準ABC型_細幅Vベルトウェッジタイプ3V5V

もっとも普及しているのが上記Vベルト

Vリブドベルト・平ベルト・タイミング・ベルト

特にVベルトの種類はサイズの異なる型も多く、さらに周長の異なるものまで考慮すると、膨大な数のベルトが存在する。

Vベルトの主な型とサイズ
Vベルトの主な型とサイズ

モーター直結の設計が多くなってはいるが、動力伝達上もし何かあったときの緩衝材としての役割や、その豊富な種類、廉価でホームセンターでも買えるという入手性の良さから多用されているのがVベルトである。

設計の幅があり、実績もある。
また技術的な数値や支えがあれば採用し易い。

実際、現在でも重要な機械に使用されていることをみると、むしろ、いかにVベルトに頼っているかということに気が付かされる。
さて、果たしてこれがベストなのだろうか?

Vベルトの問題点

Vベルトの主成分はゴムである。ゴムは一般的に環境に左右されやすい。高温、油分など環境から劣化しやすく、粉塵などからいったんスリップを生じるとプーリー溝を摩耗させ、テンションが緩み、さらにスリップを生む負の摩耗スパイラルに陥ってしまう。
ベルトのバタつき振幅が次第に大きくなるのが、まさにそれである。いわゆるベルトのバタつき現象は、ある一定の回転数で増幅され、振動騒音低周波などの環境問題となることもある。
偏摩耗してしまったプーリーは交換しないと、ベルト交換直後から負のスパイラルが始まることとなる。同時に振動によりベアリング交換が必要となることもある。
多本掛けの場合、ベルトをロットで管理しても若干なりとも個体差は否めず、またプーリー側の状態にも依る。
ベルト心線自体に伸縮性はなく、ベルトそのものから慢性的に黒いゴムの粉が出てくるとなると、そもそもベルトが滑る温床が存在していることに他ならない。

では、交換となった場合はどうだろう?

たいていは問題が生じたときにはじめて対応することになるが、ベルトの在庫がないとすぐには対応できない。あったとしても全面的にそちらに手を取られる。ない場合は、完全に停止してしまう。
長期間在庫してたものが劣化してしまった場合も同様である。重要な機械などはあらかじめ定期修理で交換することが想定されるが、それなりに作業人数や工数を省かなければならない。もしプーリーが両持ち状態の機械だった場合、軸を抜く必要が生じる。
単純なベルト交換の作業に収まらず、重機を導入しなければならなくなるかもしれない。

その他の選択肢

パワーツイスト

Fenner Drives(フェナー・ドライブズ:米)社は パワーツイストというVベルト対応の樹脂ベルトを提案している。

材質はポリウレタンとポリエステルの合成繊維で下記の特長を持つ。

  • 1環境温度は-40~100℃で、油・水・薬品・蒸気など耐環境性に優れる
  • 2低発塵のため、クリーン環境や食品業界でも使用

また、着脱が可能というジョイント式の構造からの特長は、

  • 3着脱が簡単で、伸縮性があり機械を分解せずに交換可能
  • 4自由に長さを変えられるため、緊急対応可能、保守・管理(在庫・スペース)コスト削減
  • 5省エネ効果(国産省エネVベルトと同等の省エネ効果)
  • 6振動吸収性(バタつきを抑え、加工精度向上し、プーリーやベアリング寿命延長)

当座凌ぎではと思われるだろうが、実は破断強度、伝達力ともに通常のVベルトと同等である。
Fenner Drives社は1世紀以上にも渡ってこの特殊なベルトを提供している。
米空軍やNATO軍までも使用していることを知る人は少ない。

唯一懸念材料は、単純に価格のみで比較すると数倍になる。
しかしながら、ベルト以外のコストを見るならば、決して高い買い物でないことは耐久性にフォーカスした下の参考例を見ればわかるだろう。

ゴム製Vベルト VS パワーツイスト 発生費用推移

Vベルトとパワーツイストのコスト比較1

ゴム製Vベルト VS パワーツイスト 費用対効果

Vベルトとパワーツイストのコスト比較2

既存の問題解決に至らなくては、コストは二の次である。
もし上記一つでも有効であればすべてのメリットがついてくる。
単純に商品単価ではなく、付加価値を考慮したら、想定外のトータルコストダウンの可能性も見えてくる。

また、メリットを活かした新たな選択肢ともなり得る。
実は動力用のみならず、耐環境性が高く、メンテナンス性に優れている点で搬送業界ではすでに幅広い実績がある。
Vベルトという範疇でありながら、別な選択肢として見たら面白いのではないだろうか。

担当者コメント

メカニカルコンポーネンツ部 機工課 課長:斉藤 博幸(Hiroyuki Saitoh)

導入に向けてご不明な点等ございましたら、遠慮なくご相談ください。
お試しいただけると、製品の魅力が伝わるかと思います。

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