概要

クリープとは軸受と軸、またはハウジングとの取り付け面上(はめあい面上)で円周方向に生じる滑りのことを言います。
クリープが発生すると、

  • 錆びや摩耗粉の発生およびそれらの軸受内への侵入
  • 振動などによる挙動の乱れ
  • 異常発熱
などが生じ、最終的に軸受損傷に至ることがあります。

クリープ
軸受に生じたクリープ

一般的に軸受は、その軌道輪が軸またはハウジングに対しはめあわされて取り付けられます。はめあいはその締め代の有無、大きさによって「しまりばめ」「中間ばめ」「すきまばめ」の3種類に分類されます。この締め代が十分でなく、取り付け面間に大きなすきまがある場合にクリープが発生します。そのため、「しまりばめ」で軸受を取り付けることが防止策となります。

また、「しまりばめ」は高速運転時にも有効です。例として内輪回転する軸受が高速で運転される場合、遠心力の作用により内輪が外輪側(半径方向)に膨張します。すると、軸と軸受内輪の間にすきまが出来てしまうため、クリープのみならず、ガタツキによる振動発生や、予圧変動が発生し得ます。そのため、高速運転アプリケーションにおいては、あらかじめ膨張分を考慮した締め代を与え軸受を組付けることで、これらの運転不良の防止を図ることができます。

しかしながら「しまりばめ」で軸受を取り付けると、メンテナンス時などの軸受着脱時に取外し性が悪化するといったデメリットが生じます。そのため、必ずしも「しまりばめ」が推奨されるわけではなく、メンテナンス性なども比較吟味し、全体としてメリットが大きい方に妥協する必要があります。

一般的に軌道輪は荷重を受けますが、はめあいの選定には荷重条件を吟味する必要があります。荷重の方向に対して軌道輪が静止しているとき(軌道輪に対する静止荷重)には、軌道輪をはめあい面上で移動させる力は発生しません。荷重の方向に対して軌道輪が回転しているとき(軌道輪に対する回転荷重)、はめあい面にすきまがあると軌道輪は円周方向にクリープします。また、衝撃性の荷重であればスリップが発生するケースもあります。

荷重条件とはめあいの選定の例は、下表となります。

回転条件 荷重条件 はめあい
内輪回転
外輪静止
重量が負荷されている軸 クリープ002.jpg 内輪:
回転荷重
外輪:
静止荷重
内輪:
「しまりばめ」が必要
外輪:
「すきまばめ」でもよい
荷重方向は一定
内輪静止
外輪回転
アンバランス量が大きいホイールハブ軸受 クリープ003.jpg
荷重方向は
外輪と共に回転
内輪静止
外輪回転
自動車の前輪のホイールハブ軸受 クリープ004.jpg 内輪:
静止荷重
外輪:
回転荷重
内輪:
「すきまばめ」でもよい
外輪:
「しまりばめ」が必要
荷重方向は
一定
内輪回転
外輪静止
遠心分離機、振動ふるい クリープ005.jpg
荷重方向は
内輪と共に回転

揺動荷重や不確定荷重が作用する環境下で軸受を使用する場合は、それらを回転荷重と同じように考え、「しまりばめ」にすることで同じくクリープを防止することができます。

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