概要

危険速度は、回転体と軸受系の質量、材料からくる剛性により決る共振周波数に対応する、回転体の回転速度のことを指します。この回転数で軸を回転させると全体的なシステムが共振するため非常に危険な状態になります。共振により回転体が大きく振れてしまうため、軸受システム全体が破損し、大きな事故につながることがあります。 そのため、その用途で実際に使用する前に危険速度または最高許容回転数を事前に把握しておくことが重要です。ここでは、空気軸受における危険速度について説明します。

空気軸受スピンドルの危険速度:1/2周波数における旋回効果

空気静圧軸受のスピンドルは主に軽負荷で高速回転を要する用途に使用されています。高速回転になればなるほど小さな軸を使用することにより共振の周波数を回避するのが一般的です。

空気静圧軸受で回転するシャフトの危険速度NCは、下記の式が成立するときに発生します。

NC=1/2×W1=W2=2×Fn

  • W1 = シャフトの回転周波数
  • W2 = シャフトの旋回周波数
  • Fn = シャフトの一次固有振動数

この固有振動数には、スピンドルにおいては工具、工具ホルダーとシャフトを含む回転体全体の要素を考慮する必要があります。

空気静圧軸受の場合、シャフトが回転しているとき、軸受部におけるシャフトの回転している位置は安定しています。しかし、回転数がシャフトの固有振動数の2倍に到達すると、シャフトはベアリングの回転中心の周りをシャフト回転(自転)の半分の回転数、即ち固有振動数と同じ回転数で周回(旋回)します。

危険速度.png

この旋回する速度が固有振動数と一致すると、反力が無限になり、ベアリングが不安定になり、さらにベアリングの減衰性がゼロになります。即ち、減衰性が無いバネのような状態になります。この結果、このシステム全体に大きな損傷が発生します。

危険速度を算出した後、最高許容回転数を算出します。これは、上記の計算には温度や熱、回転体のアンバランスによる振動、湿度、スピンドルのクランプ方法等の影響が考慮されていないため、安全率を使用します。目安として、最高許容回転数は危険速度の70~80%として計算します。

シャフトの一次固有振動数:Fn = 1000 Hz
危険速度:Nc = 2 x Fn = 2000 Hz、回転数は~120,000 min-1
最高許容回転数:120,000 min-1×80% = 96,000 min-1

尚、空気ではなく油静圧の軸受でも上記と同様な計算となります。油の場合、油の供給温度を変更することにより油の粘度を変化させ、減衰効果を得ることにより一時的に危険速度を回避することが可能です。

危険速度での使用は絶対に回避しなければなりません。スピンドル本体の選定のほかに、工具、ツーリングの選定の寸法、材質を調整することで回避できる場合があります。太い、または長い回転体の場合は特に注意が必要です。

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