概要

はじめに放電加工は、油や水などの加工液(絶縁液)中で工具となる電極と工作物を対向させた状態から、数~数十µmの極間距離で繰り返し火花放電を発生させ、材料の一部を蒸発、溶融除去しながら進行する加工方法の1つです。火花放電は1秒間に数千~数十万回の頻度で発生され、微小な放電痕が次々と生成されることによって進行します。放電加工は、形彫り放電加工(Electrical Discharge Machining)とワイヤ放電加工(Wire Electrical Discharge Machining)の2種類に分けられ、それぞれの持つ特徴によって用途が異なります。

特徴

火花放電は1回あたりの加工量が少ないため、切削加工よりも加工速度は遅いものの、導電性材料であれば硬さや靭性などの機械的強度によらず、比較的容易に形状加工が可能とされています。切削加工や研削加工の工作機械では、工具や工作物が回転運動するため、加工形状によっては加工が困難な場合があります。それに対して放電加工機は、工具と工作物の相対運動を必要としないため、複雑形状の加工が得意で、熱エネルギーを用いた非接触加工(加工反力の小さい)であることが特徴として挙げられます。

形彫り放電加工は、主に銅やグラファイトを電極材料として、切削等により成形した電極形状が工作物に転写されます。一般的に荒加工においては電極を(+)極性、仕上げ加工では(-)極性とし、絶縁液には油が用いられます。火災の危険性を考慮すると水系加工液が望ましいのですが、極間距離が広くなり、油性加工液ほど仕上げ面粗さが良好ではなく、工具消耗が大きいなどの理由で灯油系の加工油が使用される場合が多いようです。

放電回路はコンデンサー放電回路とトランジスター放電回路の2種類に大別されます。コンデンサー放電回路は、パルス幅と放電電流が回路中のコンデンサー:Cと抵抗:Rおよび配線のインダクタンス:Lで決まり、電流値とパルス幅を独立に制御することが困難です。一方でトランジスター放電回路は、トランジスターのONとOFFによってパルス幅を制御することが可能で、パルス幅と電流値を独立に制御することができます。1回あたりの放電で極間に投入される全エネルギーq[J]はq=e×Ip×tiによって表されます(放電電圧:e,放電ピーク電流:Ip,パルス幅:ti)。このエネルギーの値が加工速度や表面粗さや工具消耗などの加工特性に寄与します。荒加工条件でIpとtiを大きく設定した場合、放電1回あたりの除去量が大きくなるため加工速度は向上しますが、生成される放電痕が大きくなるため表面粗さは粗くなります。一方で仕上げ加工ではIpとtiを小さくすることによって、加工速度は低下するものの良好な仕上げ面粗さが得られます。これらのIpとtiの他に、休止時間trの組み合せによって、最適な加工条件が選定されます。

加工現象

放電加工は1発1発の単発放電の繰り返しによって生成された放電痕の積み重ねで加工が進行します。単発放電現象における溶融部除去過程は以下の通りです。

1.電極と工作物の接近および絶縁破壊

絶縁液中において電極と工作物との間に100V程度の電圧を印加した状態から、数µm~数十µmの間隙まで近づけると、電界強度(V/µm)が絶縁破壊電圧を上回ると絶縁破壊が生じ、火花放電が発生します。

2.入熱および溶融過程

火花放電が発生した放電店に電流が激しく流れ込み、アーク柱が成長します。放電発生は(-)極側にはイオンの衝突、(+)極側には電子の衝突が起こり、それぞれの運動エネルギーを受け渡しすることによって、電極と工作物表面が加熱されます。この時、アーク中心部で6000~7000Kの高温になり、材料の一部は沸点に達し、蒸発による材料除去が行われます。熱伝導によって材料内部の温度上昇も進行し、溶融域が広がります。また同時に、放電店周辺の絶縁液も高温にさらされることから気化・膨張が起きます。

3.材料除去過程

蒸発による除去の他に、気泡の膨張・収縮運動により溶融部が液中に飛散し、放電痕が形成されます。

4.絶縁回復

放電が終了するとアーク柱は消滅し、気泡の崩壊とともに極間は再び絶縁液で満たされ、極間の絶縁が回復します。また、極間に飛散した溶融部は絶縁液によって冷却され加工粉になります。除去されなかった一部の溶融部は溶け残りとして母材に残ります。

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