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概要

フレッチンングは、一般にフレッチングコロージョン(Fretting Corrosion)、フレッチング摩耗(Fretting wear)の略語として定着しています。高速スピンドルにおける代表的な損傷現象のひとつです。

フレッチングとは、弾性接触部を持つ機械構造部品の接合面における微小摩耗です。部品の剛性差、外的変動負荷、振動によって接合面が弾性変形から、微小相対すべりを起こし、その繰り返しにより摩耗粉が発生、そして酸化し、その粒子がさらなる摩耗を引き起こすことによりフレッチングが促進されます。

フレッチングの起きやすい微小相対すべりは、次のような接合部の環境下で起きやすくなります。

  • 軸受と軸もしくは、軸受とハウジングの接触部に変動荷重を受けているとき。
  • 球と平面板の接触時に法線方向の変動荷重を受けているとき。
  • 異なる径を持った球と球の接触時に法線方向の変動荷重を受けているとき。
  • 平面板と平面板の接触時に変動荷重を受けているとき。

高速スピンドルにおいて、これらの環境下になる接合部は多くあります。よって次の通り考察していきます。

高速スピンドルにおけるフレッチングとその対策

部位と対策

軸受と軸 (軸受とハウジング)

軸受は、外部から受ける加工負荷、動力からくる負荷、遠心力、重力を受けています。また、動バランスによる振動、回転による慣性モーメント、熱膨張、収縮も受けています。それらを考慮して、フレッチングを防止するための最適なはめあいを決定することが必要です。

内輪回転時、軸と内輪とのはめあいを基本しまりばめとし、遠心力を考慮して最高回転数時に残留締め代が1㎛は存在するようにします。(定位置予圧設計での増加については、必要に応じて間座に段差をつけるなど措置します。)

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固定側軸受とハウジングのはめあいもしまりばめにしたいのですが、予圧増加や別の要因を引き起こしやすいので、ゼロからわずかなすきまばめとします。

自由側軸受とハウジングのはめあいは、基本すきまばめですが、すきまを大きく取り過ぎてしまうと微小相対すべりが大きくなります。しかし、すきまが小さくても外輪の熱膨張に対しての追従性を妨げてしまいます。

できれば、事前に動剛性解析を行い、固有振動を把握し、使用回転数域でスピンドル後部に大きな振動を発生させないような設計構造にします。

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すきまが小さくても追従しやすくするためには、ハウジングと外輪接合部に粘度の高いグリースを塗布したり、追従用のばねを入れたりする場合があります。

定圧予圧時、自由側軸受は直接ばね等によって、熱膨張、収縮を吸収させるために摺動させるか周辺構造を摺動させる必要があります。そのため、外輪もしくは周辺構造にフレッチングが発生しやすくなります。

自由側の構造例

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軸受を直接ばねで押す場合

平面に均一に力がかかるようにばねの高さを一定にすることが必要です。 皿ばねよりはコイルばねを用いて、ばね荷重及び高さを安定させます。できれば直接軸受を押さず、平行度、平面度を管理した間座を介して押すようにすることをお勧めします。

ボールケージを使用する場合

ボールケージとハウジングは基本しまりばめとします。フレッチングが発生しやすい構造ですので外的変動負荷、振動を十分考慮することが必要です。

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ボールケージを使用しない場合

軸受ケースとハウジングはすきまばめとします。フレッチングは発生しにくい構造です。ただ、摺動抵抗が大きくなりますので、組付け時には適切なグリースを塗布すること、また抵抗を減少させる設計を施す、部品精度、組付精度に注意することが必要です。

軸受間座と軸

内輪回転において、内輪間座は、遠心力の影響を受けやすいので、必要以上に肉厚を厚くしないことをおすすめします。また、過大なスキマばめはアンバランス要因となり、フレッチングを発生させやすくなります。

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インターフェイス

軸と工具ホルダー、マンドレルの接合面は、はめあい及びクランプ力で管理されています。フレッチングを防ぐために、適当な合わせ面を作ること、より大きなしまりばめにすること、クランプ力を大きくすることで防ぐことができます。

一方、適当な合わせ面を形成させるための異物混入を防ぐ設計、クランプ力を大きくするための倍力構造設計、過大なアンクランプ力を発生させない二面拘束の採用なども合わせて考える必要もあります。

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高速スピンドルにおいてフレッチングを防止することは、加工性能を向上させ、軸受けの寿命を伸ばします。外的変動負荷に耐えうる剛性と、減衰性の両側面から十分な検討を行い、開発プロセスを構築していくことが望まれます。

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