概要
寸法の許容範囲を指示する「寸法公差」に対し、「幾何公差」では、"丸み"や"真っすぐな度合い"、"芯ずれの度合い"といった形状の許容範囲を指示することができます。
幾何公差は大きく分類すると「形状公差」「姿勢公差」「位置公差」「振れ公差」の4つに分類され、さらに細かく分類すれば表1のように分類されます。
種類によっては「基準となる軸や面からどの程度の形状ズレを許容するのか」というように、幾何公差の基準を指示することが必要となります。この基準のことを「データム」といい、図1(a)または(b)のように図示します。
ここで、
- 図1(a)では、データムAがφD寸法線の延長上に図示
- 図1(b)では、データムBが外形線上に図示
このように図示方法が異なると、それぞれのデータムが示す意味は異なります。
- データムが寸法線の延長上に指示されたときは、そのデータムは軸線または中心平面を表す。
⇒ 図1(a)では円柱αの軸線がデータムを表す。
- データムが外形線上に指示されたときは、そのデータムはその外形線や面の表面を表す。
⇒ 図1(b)では円柱βの下面がデータムを表す。
また、幾何公差の指示方法もデータムと同様、どこに図示されるかで意味が異なります。
- ・図1(a)では、円柱βの下面に直角度0.01が指示(データムAを基準)
⇒ 円柱βの下面は、円柱αの軸線に垂直、
かつ0.01mm離れた二つの平行な平面の間になければならない。 - ・図1(b)では、円柱αの軸線に直角度0.01が指示(データムBを基準)
⇒ 円柱αの軸線は、円柱βの下面に垂直、
かつ0.01mm離れた二つの平行な平面の間になければならない。
表1.幾何公差の種類
種類 | 名称 | 記号 | 定義 | データム 表示 |
---|---|---|---|---|
形状公差 | 真直度 | 直線形体の幾何学的に正しい直線からのひらきの許容値。 | 無 | |
平面度 | 平面形体の幾何学的に正しい平面からのひらきの許容値。 | 無 | ||
真円度 | 円形形体の幾何学的に正しい円からのひらきの許容値。 | 無 | ||
円筒度 | 円筒形体の幾何学的に正しい円筒からのひらきの許容値。 | 無 | ||
線の 輪郭度 |
理論的に正確な寸法によって定められた幾何学的輪郭からの線の輪郭のひらきの許容値。 | 無 | ||
面の 輪郭度 |
理論的に正確な寸法によって定められた幾何学的輪郭からの面の輪郭のひらきの許容値。 | 無 | ||
姿勢公差 | 平行度 | データム直線またはデータム平面に対して平行な幾何学的直線または幾何学的平面からの平行であるべき直線形体または平面形体のひらきの許容値。 | 必要 | |
直角度 | データム直線またはデータム平面に対して直角な幾何学的直線または幾何学的平面からの直角であるべき直線形体または平面形体のひらきの許容値。 | 必要 | ||
傾斜度 | データム直線またはデータム平面に対して理論的に正確な角度をもつ幾何学的直線または幾何学的平面からの理論的に正確な角度をもつべき直線形体または平面形体のひらきの許容値。 | 必要 | ||
位置公差 | 位置度 | データムまたは他の形体に関連して定められた理論的に正確な位置からの点、直線形体、または平面形体のひらきの許容値。 | 必要 | |
同心度 | データム円の中心に対する他の円形形体の中心の位置のひらきの許容値。 | 必要 | ||
同軸度 | データム軸直線と同一直線上にあるべき軸線のデータム軸直線からのひらきの許容値。 | 必要 | ||
対称度 | データム軸直線またはデータム中心平面に関して互いに対称であるべき形体の対称位置からのひらきの許容値。 | 必要 | ||
振れ公差 | 円周振れ | データム軸直線を軸とする回転体をデータム軸直線のまわりに回転したとき、その表面が指定された位置または任意の位置において指定された方向に変位する許容値。 | 必要 | |
全振れ | データム軸直線を軸とする回転体をデータム軸直線のまわりに回転したとき、その表面が指定された方向に変位する許容値。 | 必要 |