概要
クラッチとは同一軸上にある駆動側・被動側間において動力の伝達・遮断を行う機能を持つ機械要素を指します。※その中でもワンウェイクラッチは一定方向のみに動力を伝達するクラッチを指します。ワンウェイクラッチは追越しクラッチやフリーホイールクラッチとも呼称されます。
ワンウェイクラッチによる機構
バックストップ
逆転を防止するための機構です。コンベヤの重力による逆回転防止や、発電機の逆回転による電気の逆流防止など、プロセスラインを守る役割に使用されます。またホテルの回転ドアや防火扉、ウインチケーブルのブレーキなど、安全を維持するための装置にも用いられます。
オーバーランニング
伝達を切り離すための機構です。被動側の速度が駆動側の速度を上回った際(被動側>駆動側)、切り離して空回りさせます。自転車が坂道でタイヤ(被動側)が回転している際、ペダル(駆動側)が回転せず安全な状態を維持できるのはこの機構によるものです。
インデックス
間欠送りとも呼称される機構です。工作機械や半導体製造装置、印刷機など目的に合わせて一定の角度や距離に送る装置に用いられます。歯車による調整機構が一般的であるものの、ワンウェイクラッチ機構もまた信頼性の高い機構です。
ワンウェイクラッチの種類
スプリングクラッチ
コイル状ばねの巻き込みによって一方向だけに動力を伝達させるクラッチです。※
カムクラッチ
玉軸受またはころ軸受けに似た構造ですが、転動面に当たる箇所に溝があるタイプやころの形状が卵形状になっているタイプがありこの機械要素そのものがカムと呼称されます。これらの凹凸が一方向の回転時にのみ噛み合うことにより、動力を伝達させます。
スプラグ式クラッチ
繭形部品(スプラグ)が全周に配置されており、スプラグが一方向の回転時にのみ直立することで動力を伝達させます。福田交易ではGMN社(ドイツ)製スプラグ式ワンウェイクラッチを取り扱っています。

スプラグ式ワンウェイクラッチの特長
省スペースかつ高トルク
スプラグが全周に配置されているため、動力伝達時に軸(または外輪)に発生する負荷を、他方式のワンウェイクラッチと比較して広い範囲に分散させます。この仕組みにより、省スペースと高トルクを両立させることができ、新規設計において高い自由度を提供できます。


高精度位置決め
GMN社製スプラグ式ワンウェイクラッチの場合、スプラグが直立するまでに必要な角度αを極小となるよう設計されています。


そのため高精度の位置決めを求められる工作機械のテーブルや繰り返し精度を求められるインデックス機構においても優れたパフォーマンスを発揮できます。
※ 日本工業規格(現:日本産業規格) B 0152-1997 クラッチ及びブレーキ用語より
関連情報
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GMN社(ドイツ)製スプラグ式ワンウェイクラッチ