Fenner Drives(フェナー・ドライブズ)社パワーツイスト

「ツールエンジニア」2023年4月号
特集『バリ取り・エッジ仕上げ加工』に記事が掲載されました。

メカニカルコンポーネンツ部 機工課 乗松 俊太郎(Syuntaro Norimatsu)

はじめに

新たに開発されたスピンドル

現在、労働人口の減少および生産効率改善、品質安定化などの理由により、さまざまな分野で産業用ロボットを使用した生産工程の自動化が進んでいる。

もともとはワーク搬送や溶接などで使用されることが多かったが、近年は工作機械と組み合わせての使用など、加工分野でも積極的に使おうとする動きが見受けられる。

そのなかで、バリ取りの工程については従来自動化が遅れている分野ではあったが、以前に比べるとさまざまなツールも開発されてきていることから、以前に比べるとさまざまな技術が開発されてきていることから、徐々にバリ取りロボット用のATCコレット導入が進んできている。

Vリブドベルト・平ベルト・タイミング・ベルト
ATCコレット対応エアスピンドル

ここでは、バリ取りロボット用のATCコレット対応エアスピンドルについて紹介する。

BIAX社の高い技術力を導入

専用コレット
専用コレット

BIAX社はドイツに本社をおき、欧米ではエア式ハンドグラインダーの知名度が高いが、30年ほど前からロボット搭載用エアスピンドルをすでに開発しており、国内外での採用実績も多い。同製品は高品質なエアモータに加え精度の高いフローティングホルダを搭載していることで、大小さまざまな大きさのバリに追従しながら加工を行うことが可能となっている。

同社では新製品の開発も積極的に行っており、このたび新たに先端工具の自動交換(ATC)機能を搭載した、ATCコレット対応エアスピンドル「R4105 SW」「R4105 SWAX」を開発した。

本製品は従来のものと異なり、コレット(写真左)がワンタッチ着脱式へ変更されており、コレット・チェンジ・スタンドと組み合わせて使用することにより、従来は手作業で行っていたコレットの脱着作業もロボットに自動で行わせることが可能となる。

また、交換機構はボールジョイントが使用されており機械的に脱着が可能なため、エアや電気などは不要である。

2種類それぞれの機能

同製品には2種類あり、ATCコレットに対応した「R4105 SW」に加え、さらにアキシアル方向へのフローティング機能も追加した「R4105 SWAX」があるが、こちらは加工面に対して押し当てる力を調整して前後方向へ追従させることが可能となっているため、カップブラシなどアキシアル向で当てながら使用する先端工具を使用する場合、前後方向の負荷を吸収しながらブラシが摩耗してもワークへ押し当てる力を均等に保つことが可能となる。

ほかにもワークの外周面に沿って倣い加工をさせることにより、ワーク端面の面取りなどにも使用が可能となる。

フローティング力は本体に内部のばねを調整する機構が備わっているため、加工条件に合わせて任意で約5N~70Nまで調整することが可能である。

同製品は、「コレットの自動交換機能」と「アキシアル方向へのフローティング機能」を1台のスピンドルに搭載している非常に優れた製品であり、スピンドル駆動源もエア式のためロボット側に電気制御を行うユニットも不要なため、低いコストでさまざまな運用を検討することが可能となる。

適用事例

コレット・チェンジ・スタンド
コレット・チェンジ・スタンド
  • 1摩耗工具の定期交換
  • 同じ先端工具を装着したコレットとコレット・チェンジ・スタンドを、あらかじめセル内にセットしておくことにより、加工を続け摩耗した先端工具を定期的に新しいものへ交換することが可能となる(写真左)。

    従来はロボットを止めて作業者がセル内に入って交換していた作業が不要となるため、工数およびダウンタイムの低減につながる。

  • 2異なる先端工具を使用した加工
  • セル内に異なる先端工具を数種類用意しておけば、ロボットが自動的に先端工具の種類を変更しながら、加工を行うことが可能となる(写真下)。たとえば超硬ロータリーバーでワークの外周面取りを行ったあと、先端工具をブラシに持ち替えてワーク表面の研磨を行わせるなど、従来では複数台のロボットやスピンドルで行っていた作業を効率化させることが可能となる。

    また、多くの先端工具を準備することで、ワークの種類に応じて加工内容を変更することも可能となる。

先端工具を取り付けた状態
先端工具を取付けた状態

今後の取組み

当社は技術系輸入商社として、海外の優れた製品を国内のお客様へ提案するにあたり、2019年に神奈川県海老名市へテクニカルセンターを新設した。

BIAX社製品については定期的なオーバーホールや修理は同所で対応できる体制を整えている。

また、2020年には新たに自社設備として6軸ロボットを導入しており、お客様のワークをお預かりして、BIAX社製品をはじめ、同じくドイツ製のバリ取り用ツールであるWSE社製品(オイルフリースピンドルおよび3次元プリンタ製フローティングホルダ)などを、実際にロボットに搭載して無償で加工テストを行い、その結果をお客様へ提供し、導入に向けた検討材料にしていただく試みを開始している。

また、ロボットシステム全般の構築や設置などについても提携システムインテグレーターと相談のうえ提案を行うことも可能である。

今後もユーザーからのバリ取り自動化の要望に対して、適切な提案を行えるよう体制を整えていく。

乗松

担当者コメント

メカニカルコンポーネンツ部 機工課 マネージャ:乗松 俊太郎(Syuntaro Norimatsu)

BIAXスピンドルのデモ機をお貸し出しすることも可能です。
また、お客様のワークをお送りいただくことで、バリに適したスピンドルや刃物(超硬ロータリーバー)の選定・ご提案も行わせていただいておりますので、ぜひご相談いただければと思います。

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