「コンバーテック」2024年4月号に記事が掲載されました。

モーションドライブ部 精機技術課 百濟 壮一(Soichi Kudara)

エアベアリングとは

エアベアリングは、三次元測定機(CMM)や精密ステージをはじめとする精密機械分野で広く使用されており、重要な機械要素の1つとして認知されている。
エアベアリングを使用して摩擦を取り除くと、従来の転がり軸受では実現できなかった動作や機能が実現できるようになる。

NEWWAY社の製品は、多孔質材カーボンを使用した静圧エアベアリングである。

一般的なオリフィス絞りと違って、NEWWAY社の多孔質エアベアリングは、多孔質材に開いている無数のサブミクロンの孔を通してベアリング表面全体で空気流量を絞る。

水中の多孔質材

エアベアリングの多孔質材面と相手側ガイド面との間に加圧空気層が生成され、この加圧空気の静圧によりエアベアリングがガイド面に対して約5~10μm浮上する。

これにより、摺動摩擦がなくなり空気の粘性抵抗のみになる。

多孔質材エアベアリングは次の特長を持つ。

  • ・摩擦なし
  • ・高い静音性
  • ・熱影響が少ない
  • ・堅牢で接触に強い
  • ・エア消費量が少ない
水中の多孔質材

フラットエアベアリング

フラットエアベアリング

多孔質カーボンを用いた「パッド」形状の静圧エアベアリングは、自由度の高い設計が可能である。

専用のマウントにより、エアベアリングの取り付けやアライメントの微調整が簡単に行える。
一般的にガイド面にはグラナイトや表面処理したアルミ、セラミック、ガラス、ステンレス、メッキ処理した金属・プラスチック・エポキシなどが使用可能である。
エアベアリングの基本性能を発揮させるために、ガイド面の平坦度は2~3µm程度、面粗度は1.6S以下に仕上げる必要がある。
主な用途は、CM M、精密測長機、スキャナ、素材検査機、高速アプリケーション、ダイヤモンド旋盤、ドライマシニング、各種半導体・液晶装置などである。

エアブッシュ

エアブッシュは、軸を浮上させて直動と回転運動を支持できる。
軸には、主にステンレスやアルミニウム、クロムメッキした金属を使用する。
軸とエアブッシュは非接触であるため、軸硬度を上げる必要がない。
また、上記以外のガラスやプラスチック、樹脂なども使用可能である。

ブッシュをハウジングに組み込む際のアライメント調整を容易にするため、ブッシュの外径に弾性変形するOリングを採用している。
また、組み込み後のOリングは供給エアの漏れを防ぐシールとしての機能も担う。

高剛性が要求されるアプリケーションでは、エアブッシュを直接クランプして使用する。
オプションで専用ハウジングやステンレス軸などもある。

エアブッシュ

NEWWAY社は、創業からコンポーネント化した多孔質材エアベアリングのパイオニアとして製造販売を開始し、世界中の様々な用途向けにエアベアリングを送り出している。

前出の平面ガイド上で浮上スライドするフラットタイプや、シャフトを浮上させるブッシュタイプのエアベアリングを中心に取り扱ってきた。

従来、エアベアリングは、浮上する機器側に取り付けられることが多かったが、独自に研究を重ね、設置されたエアベアリング上でガラスを浮上させて非接触搬送するという従来とは逆の発想で、Flat PanelDisplay(FPD)搬送用のコンベアタイプの開発に成功した。

搬送用コンベアタイプ

近年、これらの経験を基に、フィルムをRoll to Rollで非接触搬送するためのロール状エアベアリング「エアターン」を開発した。
エアターンは、両端部を生産設備側に完全に固定して使用する。従来のロールのように回転させながら使用しない点が、大きく異なる。

エアターン(Air Turn)

ここからは、NEWWAY社が提供しているブログより内容を抜粋して読者へ提供したい。

エアターンを使用したウェブのRoll to Roll非接触搬送方式を提案する。エアターンは、NEWWAY特有の多孔質カーボンを中空円筒のボディに貼り付けた構造である。

ボディ部にあるエア供給口に約0.1~0.6MPaの清浄ドライエアを供給すると、加圧空気が多孔質カーボンを透過しエアターン外径からエアが穏やかに流出する。流出するエアは、エアターンに掛けたウェブとエアターン外径(多孔質材表面)との間に均一な加圧空気層を形成する。ウェブはこの空気層の静圧に支えられ、非接触で滑ることができる。

この原理により、ウェブを非接触で180°方向転換させることや、最高100m/secの速度で搬送することが可能である。

また、この搬送方式でロールとウェブ間の摩擦を除去すると、従来の接触式ロール等と比較して、いくつかの利点がある。

  • ・コンタミネーションなし
  • ・メンテナンス不要
  • ・しわ削減
  • ・ダメージ軽減
  • ・クリーンルーム対応

また、ユニークな設計のエアターンは、汎用性の高い製品であり、以下と置き換えが期待できる。

  • ・ローラー
  • ・ターンバー
  • ・スプレッダーバー
  • ・テンションバー
エアターン
エアターン
使用中のエアターン
使用中のエアターン

エアターンは、メーカー標準の製品としてラインアップされており、様々なサイズを型番表から選択可能である。
面長は250mm刻みで2000mmまで選択、外径は75/100/125/150mmで選択、抱き角は110/220/330°からそれぞれ選択できる。

形状 型式 外形
(mm)
面長×××
(mm)
ラップ角度
(°)
エアーターン S38075XXX-110 φ 75 250 ~ 2000 110
S38075XXX-220 φ 75 250 ~ 2000 220
S38075XXX-330 φ 75 250 ~ 2000 330
S38100XXX-110 φ 100 250 ~ 2000 110
S38100XXX-220 φ 100 250 ~ 2000 220
S38100XXX-330 φ 100 250 ~ 2000 330
S38125XXX-110 φ 125 250 ~ 2000 110
S38125XXX-220 φ 125 250 ~ 2000 220
S38125XXX-330 φ 125 250 ~ 2000 330
S38150XXX-110 φ 150 250 ~ 2000 110
S38150XXX-220 φ 150 250 ~ 2000 220
S38150XXX-330 φ 150 250 ~ 2000 330

その他オプションで、エアターンを生産設備側に固定するためのアルミ製ジャーナル(φ25mm軸)も別途用意している。
なお、ジャーナルはエアターンの両端のねじ穴に取り付けて使用する。

また、最近では400°F(約204℃)までの温度に耐えられる高温(HT)タイプもラインアップに加わった。

高温(HT)タイプ

アプリケーション

  • 1プラスチック製造
  • 非接触搬送が可能なエアターンは、コンタミネーションによる製品の歩留まりや、従来の転がり軸受に起因するメンテナンスコストを改善する。
    エアターンは、ポリスチレンフィルムの世界的メーカーであるMulti-P l a s t i c s社に導入され、その有用性が実証されている。
    M u l t i-Plastics社は、エアターンを導入することで、従来のアイドラーローラー起因のしわや修繕による廃棄物コストの課題を改善した。
    エアターンは、エアを吹き出す設計のため、高温のウェブを従来と比べより早く冷却することも期待できる。

  • 2半導体製造
  • 軽量フレキシブルなFlexible Hybrid Electronics(FHE)に対して、エアターンの非接触性を活用すれば、さらなる製品歩留まり改善や検査性の改善が期待できる。
    さらにエアターンに使用されている多孔質材カーボンは、サブミクロンの小孔が無数に開いたエアフィルターのようなものであり、出てくるエアはクリーンである。
    これについては、既にISO 146441-1クラス3のクリーンルームに対応可能であることが、テスト実証されている。

  • 3フレキシブルディスプレイ生産
  • 今後もガラスパネルはより薄く、より柔軟になり、生産時のハンドリングには、様々な工夫が必要になる。
    エアターンは、非接触で傷を付けることなくガラスウェブを高速搬送可能であり、フレキシブルディスプレイの生産性向上に寄与する。

  • 3プリンティング&パッケージング
  • エアターンは、印刷とパッケージングの同時コーティング用途に最適である。
    エアターンの非接触性により、意図しないコンタミネーションのリスクを回避できる。
    また、エアターンは多孔質材の特性により搬送するウェブ幅の大小に関係なく、様々な幅の材料(ラベルなど)に対応できる。

    以上は、エアターンを使用してウェブ搬送する例のほんの一部である。
    NEWWAYエアターンは、従来のロールやオリフィス式エアベアリングに代わる実用的な選択肢であり、ウェブハンドリングの最適化、合理化に有用である。

今後の販促活動

今後は、新開発された耐熱400°F(約204℃)までの高温仕様エアターン(HTタイプ)の拡販を進めたい。
今後も、できるだけ多くの顧客のお声を聞けるチャンスを広げて行く所存である。

NEWWAY社について

NEWWAY社はアメリカ合衆国ペンシルバニア州フィラデルフィアに本社および製造拠点を置いている。
同社は、多孔質材を使用した静圧エアベアリング・コンポーネントの専業メーカーであり、多孔質材エアベアリング・ソリューションのプロバイダーとして知られている。
また、モジュール式エアベアリングの設計・製造において世界をリードする独立系企業であり、1994年の創業以来、同社の製品は世界30カ国以上で販売されている。

当社とNEWWAY社の関係は長く、取り扱い開始は20年以上前の現地での展示会まで遡る。

NEWWAY社屋

福田交易について

当社は、ドイツを中心とする欧米各国から、ベアリング、スピンドル、シールなどの高精度な精密機械部品・機械要素部品を輸入、販売している輸入商社である。
1940年(昭和15年)創業者福田楽男が東京都中央区八重洲に「福田商会」を創立、ベアリング・航空機・自動車・エンジン・工作機械の各種部品輸入販売を開始し、2019年(令和元年)「厚木営業所/テクニカルセンター」を移転・新稼働、創立70周年を迎えた。
世の商社とは異なるベクトル志向で世界からユニークでよりよいものを日本の工業会に紹介している。

当社の強みは、加工機や試験機器など生産や修理に使う設備を備えたテクニカルセンターを保有しており、海外のメーカーに準ずるテストや修理が国内で完結できるアフターサービスを強化している。
また、千葉市内には、在庫を豊富に保管できる在庫管理センターを保有しており、翌日から数日で日本各地へ商品配送が可能である。

<参考> 『NEWWAY BLOG』
NEWWAY BLOG 9399 roll-to-roll-and-air-turns
NEWWAY BLOG 8503 air-turns-web-handling
(参照日:2024.03.12)

エアベアリングの詳細はこちら!

展示会に出展しました

NEWWAY社製品を高機能素材Week [2023年10月 東京]に出展した様子を動画でご覧いただけます。
※外部サイト(アペルザTV)に移動します。

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