
「機械と工具」2025年3月号に記事が掲載されました。
インダストリアルマシナリー部 野々村勇治(Nonomura Yuji)
主軸の小型化を実現する
― オットー・ヤコブ(OTT-JAKOB)社についてお教えください。
野々村 設立は1873年、1974年からドローバーシステムを市場に提供し、現在まで多岐にわたるクランプ技術を開発してきた専門メーカーです。
ドローバーは工作機械主軸の工具交換を行うためのシステムです。
同社はこれまでに6,000種以上のドローバーを設計し、数十万本以上のドローバーが世界で稼働中です。また、これに関連する測定器なども製品化しています。
― 新製品の「WDLシャフトカバードアンクランピングユニット」についてお教えください。
野々村 HSK-A63ツールインターフェースで、全長350mmのコンパクト主軸を実現するアンクランピングユニットです。
工作機械の主軸設計者にとっては魅力的な製品です。
― 主軸を小さくしたい、短くしたい、というニーズが高い?
野々村 はい。工程集約のため、複合加工機へのニーズが高まっており、工作機械メーカー各社は、たとえば旋盤ベースの複合加工機を多数開発しています。今回開発されたこのWDLシャフトカバードアンクランピングユニットは、複合旋盤に搭載されるコンパクトミーリング主軸に最適な製品です。主軸を小さくできると広い加工エリアを確保できるなど、多くのメリットがあります。
― 部品を自社で製造している工作機械メーカーもあります。
野々村 大手の工作機械メーカーでは、工具交換機能を搭載した主軸を自社で製造されているケースが多いですね。ただ、それらを設計するに当たって利用されると有効なのが今回の製品です。主軸の中にはベアリングやモーター、そのほかいろいろなものが入っています。加えてアンクランピングユニットや回転継手が入りますので、主軸は大きくなってしまう傾向があります。すでに自社で主軸を設計・製造されている工作機械メーカーからも、主軸を小さくするためのアイデアのご相談をいただいています。ドローバーメーカーとしてのオットー・ヤコブ社の実績から、当社にご相談をいただきます。
― 工作機械メーカーがドローバーを自社生産する理由は?
野々村 大手工作機械メーカーは、コストの面から自社で生産するケースが多いのです。しかし、工具をクランプする重要部品であるコレット自体はオットー・ヤコブ社のものを使うケースが多いです。コレット以外の、皿ばね機構やアンクランピング機構などは自社で設計、製造するケースが多いです。
HSKの規格化に貢献
― オットー・ヤコブ社のコレットが採用される理由は?
野々村 主軸の先端は、BT、HSK、コロマントキャプト、KM4Xなど、いろいろな規格があります。その中で、HSKはオットー・ヤコブ社が規格化に協力したという経緯があり、細部にまでこだわった信頼性の高いコレットと評価されています。
― 従来製品に比べ、どの程度短くできるのですか?
野々村 従来品では、主軸後部から飛び出ているアンクランピングユニットと回転継手の部分が80mm程度です。それに対し、新製品は13mm程度になります。工作機械メーカーで複合加工機用の短い主軸を設計したい場合に有効です。同社は、主軸のドローバーシステムをトータルでサービスしていますので、"主軸を小さくしたいのであれば、このような方式があります"という提案ができるのです。
― 特許等は?
野々村 各社が設計していますので、主軸周辺部品には多数のパテントが存在しています。オットー・ヤコブでは、それらのパテントに抵触しないよう細心の注意を払って開発・製品化し、自らも特許を取得しています。今回の製品も申請中の特許を含んでいます。
― 主軸全体の設計ではない?
野々村 主軸の中にベアリングを入れたり、ビルトインモーターを入れたりといった設計は工作機械メーカーが行います。WDLシャフトカバードアンクランピングユニットは広い設計スペースを確保できるよう配慮されているため、より高性能の主軸を設計しやすいのではないか、と考えています。
― 価格は?
野々村 まだ具体的なプロジェクトが出ていませんので、未定です。
― ヨーロッパでも新しい製品なのですか?
野々村 2024年09月10〜14日のAMB(シュツットガルト)で初公開されました。日本ではJIMTOF2024で公開された製品です。
― シェアはどの程度ですか?
野々村 詳細は不明ですが、クランピングユニットの部分だけで見ると非常に高いシェアを持っていると思われます。
今後は、研削盤への適用も
― 切削加工機械だけがターゲットですか?
野々村 ドリル、ミーリングなどの加工機は昔からニーズがありますが、ここ数年は、研削盤などでも工具交換をすることが出てきています。ATCを搭載する研削盤メーカーからの引き合いもいくつか出てきています。
― 研削盤も対象になるというのは興味深いですね。
野々村 今後、工程集約の流れで複合加工機は増えてくると思われます 。新たにニーズが出てきたときには、すぐに対応できる製品です。― 御社は、工作機械関連の製品を多数お持ちです。それらを複合させて提案することもありますか?
野々村 はい。ニーズのある会社に提案できるものは、すべて提案しようと考えています。また、当社では主軸の設計・製作もおこなっています。そこへは、各社のベアリングやセンサーを入れて設計・製作しています。神奈川県海老名市にテクニカルセンターを有しています。そこで、オーバーホールサービスを行っています。その工場で、お客様のニーズに沿ったオリジナルの主軸も製作しています。弊社は、非常にニッチですが、スピンドル周りは強い会社です。
― ありがとうございました。
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