1.予圧
アンギュラ玉軸受にアキシアル荷重が作用すると、アキシアル変位を生じます。荷重と変位を右図の「予圧なしの単列ベアリング」曲線で見ると、低荷重域で変位量が急激に増加し、荷重が増大するにつれて変位量が減少する傾向を示しています。この低荷重域での変位量増大を防ぐために、予圧が組合せ軸受に適用されています。この予圧は、リング端面を規定の量研磨することにより、内外輪の間にオフセット量(段差)を設けることで設定されます。

2.予圧の目的
- 軸のラジアル方向およびアキシアル方向の位置決めを正確にするとともに、軸の振れを抑える。
- ......工作機械の主軸用軸受、測定器の軸受など
- 軸受の剛性を高める。
- ......工作機械の主軸用軸受、自動車のデフピニオン用軸受など
- アキシアル方向の振動および共振による異音を防止する。
- ......小型電動機用軸受など
- 転動体の旋回滑り、公転滑りおよび自転滑りを抑制する。
- ......高速回転するアンギュラ玉軸受、スラスト玉軸受など
- 軌道輪に対して、転動体を正しい位置に保つ。
- ......スラスト玉軸受やスラスト自動調心ころ軸受を横軸で使用する場合など
3.組合わせ
背面組合わせDB
この組合わせでは、両方向のアキシアル荷重とラジアル荷重を受けることができ、高い剛性が得られます。予圧は、内輪を軸方向に十分締めることにより発生します。

正面組合わせDF
この組合わせは、シャフトハウジングの加工上、同心度が出しにくい場合に使用されます。ただし、この組合わせの場合、シャフトの熱膨張で予圧量が増加することに注意してください。予圧は、外輪を軸方向に十分締めることにより発生します。

並列組合わせDT
この組合わせは、一方向の高いアキシアル荷重を受けることができます。反対側に同等の軸受を全体DBの形で配置し、スぺーサによる定位置予圧またはバネによる定圧予圧で使用されます。

多列組合わせ
負荷荷重が大きいときや、大きな剛性が必要なときは多列セットで使う必要があります。セットのしかたは、荷重により変わってきますが、接触角や軸受の種類の異なる組合わせも考えられます。


多列アンギュラ玉軸受の予圧量

軸受を上図のように列数 na と nb の組合わせにする場合のセット予圧量Gaは次式で与えられる。

4.予圧量の調整
予圧レベルは通常、軽、中、重予圧の3種類で段差量を変えて研磨することにより、軸受メーカより供給されますが、軸受段差量に関係なく、内外輪スペーサの幅を段差加工することにより予圧の増減が可能です。
例
B7010C・TPA・P4・ULの軸受DB組合わせで、予圧をUMにアップする場合、内輪スペーサを20 μm薄くする。
B7020E・TPA・P4・UMの軸受DB組合わせで、予圧をULにダウンする場合、外輪スペーサを20 μm薄くする。
