ベアリングは、周辺部品、構造、潤滑を含んだ適切な選定と取扱いをすることで、疲労寿命に到達するまで長時間に渡り使用することができます。しかし、寿命に到達する前に早期損傷を引き起こしてしまう場合が数多くあります。この早期損傷の原因として次の要因が考えられます。

早期損傷の原因

  1. 取扱いミス、組付ミス
  2. 潤滑不良
  3. 異物の侵入
  4. 周辺部品の不具合(加工精度)
  5. 振動の問題
  6. 不十分な検討(予圧、荷重、潤滑)
  7. 装置の運転環境

なお、これらの要因は複合して発生することが多く、それらベアリングの症状は千差万別のため、損傷原因の判断は、装置に組込まれた各々のベアリングの症状を検証し、ベアリングの配列、荷重条件、潤滑条件、シール構造、装置の仕様、運転状況、使用環境などから総合的に判断する必要があります。正確な運転状況の把握、また予知保全として定期的な振動測定、温度測定などのデータ採取が、問題の早期解決に重要になります。
ここでは、主に工作機械主軸用精密アンギュラベアリング損傷の具体例を、実例に基づき紹介いたします。

【Case1】
内輪転送面にボールピッチ間で発生したフレーキング

原因

  • 外部からの振動によるフォールスブリネリングからの発展
  • 衝撃荷重による圧痕からの発展
外輪転送面の症状
内輪のフレーキングにより発生した金属粉による微小な圧痕が広がっている。
ボールの症状
ボールにも局部的なフレーキングが発生している。

【Case2】
内輪転送面に発生した局部的なフレーキング①

原因

  • 局部的な集中荷重が加わったことにより発生。その要因としては、ミスアライメント、ハウジングの精度不良、過大ラジアル荷重などが考えられる。
ボール(セラミック製)の症状
局部荷重により一部フレーキングを起こしている。
外輪転送面の症状
内輪のフレーキングにより発生した金属粉による微小な圧痕が広がっている。
内輪内径面の症状
フレッティングが発生している。(振動の存在を現している。・)

【Case3】
内輪転送面に発生した局部的なフレーキング②

原因

  • 局部的な集中荷重が加わったことにより発生。その要因としては、ミスアライメント、ハウジングの精度不良、過大ラジアル荷重などが考えられる。
ボールの症状
局部荷重により一部フレーキングを起こしている。
外輪転送面の症状
内輪のフレーキングにより発生した金属粉による微小な圧痕が広がっている。

【Case4】
内輪転送面の全周に渡る微小ピッチング

発熱により赤褐色に変色し、面が荒れている。

原因

  • 潤滑不良からの面荒れ。(予圧過多または過小)
ボールの症状
黒い線上痕が交差して、その面はかなり荒れていおりスピン運動(すべり運動)をしていることを示している。
外輪転送面の症状
全周に渡り微小ピッチングが発生している。
内輪内径面の症状
フレッティングが発生している。(振動の存在を現している)

【Case5】
ホーニングラインが残っている内輪転送面

原因

  • 運転時間は、約2,000時間。正常な運転状況下では、ホーニングラインが残っている。(継続使用可能な症状)
外輪転送面の症状
内輪転送面同様にホーニングラインが残っており、継続使用は可能。

【Case6】
保持器破損

外輪案内面との接触による摩耗
部分的に破損
ポケットの摩耗
ポケットの摩耗、クラック

原因

  • 潤滑不良によるボールと保持器との相対運動の乱れから摩耗が進行し破損。
ボールの症状
潤滑不良による面荒れ、変色がみられる。
内輪転送面の症状
温度上昇による変色、面荒れがみられる。
外輪転送面の症状
温度上昇による変色、面荒れがみられる。

【Case7】
外輪転送面に発生した局部的なフレーキング

局部的なスポーリングが更なるフレーキングを引き起こしている。
180°反転させた位置での外輪転送面。(フレーキングはみられない)

原因

  • ラジアル剛性不足(予圧不足)
内輪転送面の症状
転送痕は、予圧抜け方向にシフトしている。また、外輪のフレーキングから発生した金属粉による圧痕があり、摩耗が進行している。
ボールの症状
表面は全体的に軽微な摩耗を伴い、局部的なピッチングが発生している。

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