概要

絶縁ベアリング(絶縁軸受、insulated-bearing)は、軸受部品に絶縁材料の溶射処理を施したベアリング、或いは転がり軸受の一部または全部を絶縁材質で構成するベアリングです。

「絶縁ベアリング」は、流れる電流を遮断することで、ベアリングの早期損傷や潤滑劣化などの電食を防ぐために使われますが、他の目的で絶縁体を用いたベアリングすべてが「絶縁ベアリング」と呼ばれるわけではありません。

溶射によって絶縁したベアリング

ベアリングの内輪や外輪に、絶縁材料をプラズマ溶射して作られるものが一般的です。絶縁体の材料には、PTFEやガラス繊維、また代表的な材料として、酸化アルミニウム(Al2O3)セラミックスがあります。
酸化アルミニウムは、宝石の硬度を示す「モース硬度」において、ダイヤモンド(モース硬度10)に次ぐ硬さ(モース硬度9)で、安価で且つ、化学的に物性安定した材料のため、多くの産業で利用されています。

絶縁ベアリング(6212J20AB)
FAG絶縁ベアリング(シェフラー社製)

電気的な性能を示すものとして、絶縁破壊電圧があり、数字が高いほど絶縁ベアリングとして絶縁性能が優れています。これは転がり軸受の内輪内面や、外輪外面にプラズマ溶射する場合の差や、プラズマ溶射の膜厚、また溶射後に行う特殊な処理などに依存し、その性能は、500VDC、1,000VDC、3,000VDCなどと表されることが一般的です。交流では周波数に依存するため、ベアリングサイズなどによる静電容量が示されることもあります。

絶縁ベアリングは、電気抵抗(Resistance)と静電容量(Capacitance)の並列回路としてとらえることができ、絶縁体の膜厚が大きいほど絶縁破壊電圧が大きく、また、外輪(外径面と側面)の溶射よりも内輪(内径面と側面)の方が面積が小さくなりインピーダンス[Ω]が大きくなるため、より高い絶縁破壊電圧となることから、産業用モータや風力発電機、新幹線などの鉄道車両など、用途にあわせ使い分けられています。

絶縁体を用いたベアリング

オールセラミックベアリング

内外輪と転動体すべてが、セラミックス製のベアリングです。他の種類の絶縁ベアリングと電気的な性能を単純比較すると、絶縁体の厚み(ギャップ)が大きいため絶縁破壊電圧は最も高いと言えます。特殊な用途で利用されています。

ハイブリッドベアリング

その名の通り、複数の材質を組み合わせているベアリングで、転動体がセラミックス、内輪・外輪が通常の軸受鋼などの組み合わせがあり、通称「セラ玉」、「セラボール」などと呼ばれることもあります。
このタイプでは窒化ケイ素(Si3N4)セラミックスが用いることがあり、目的も電食対策だけではなく、熱膨張が小さく軽量であることや、硬く熱にも強い点などから、精度が求められる工作機械にも用いられます。


上記以外の絶縁体により形成されるベアリングもありますが、主に産業用モータや風車、鉄道などでは上の方法が用いられることが多いと言えます。

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